『とばりを降ろせ、愛の夜よ―20世紀ドイツ文学7人のパイオニア』(マルセル ライヒ=ラニツキ)

とばりを降ろせ、愛の夜よ―20世紀ドイツ文学7人のパイオニア

とばりを降ろせ、愛の夜よ―20世紀ドイツ文学7人のパイオニア

以前、「リリカの仮綴じ〆」で紹介していたので読んでみました。カフカブレヒトについて扱っている文章が私には面白かった。

女性への愛によって自分にプレゼントされた自分のことを、ブレヒトは好んでしばしば、語り手の立場や役割がわかる詩(役割詩)に書いた。自分の言いたいことを異化し、異化することによって明確にするために、女性に語らせたのだ。

私が以前[fiction]で扱っていた変な文は役割詩だったのかなぁ。上記の文章のすぐ後にこんな詩が載っています。

大好きな人が
言ってくれた。
わたしのことが必要だ、って。
だから
わたしは自分をたいせつにし、
歩く道にも気をつかい、
雨の日の雨粒にも用心する。
その一粒に打たれて死なないように。

良いですねぇ(←語彙が貧困)。私にはこういうのはとてもじゃないけど書けないなって思う(←比べるのもおこがましい)。短い文章で、とても印象的。読んだ人にいろいろなことを想像させることができる力を持っている文章。溜息でもついておこう。