『クビシメロマンチスト―人間失格・零崎人識』(西尾維新)

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社文庫)

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社文庫)


ちょっとネタバレ書きます。



おもしろい。「戯言遣い」が、何故「戯言遣い」なのか、この巻で明確になったような。言葉で人を殺せるくらいの"力"がないと、「戯言遣い」とは言えないですからね。

いーちゃんは平気で嘘をつくねぇ。いーちゃんは禍々しいねえ。黒いというか。そんなところが魅力的です。


まぁ、いろいろ思うところはあるけど、第二の死者の死因が一番きつかったです。つーか、やっぱりいーちゃんはいい性格しているよな(皮肉)。


たとえ、いーちゃんが二つ目の事件の発生に積極的に関与していたとしても、物語の後の方のいーちゃん自傷行為に近い振る舞いは、やっぱりいーちゃんとは言えつらかったのかなーとか思わせる。「その程度の理由で一人目を殺したわけ?」って犯人に対していらだったという要素もあるかも。だったら、「最初から、殺すなよ」って思ったのでは? 二人目を殺した実行犯が、その選択肢を選ぶっていうのは、罪の意識もあるだろうけど、あてつけだよね。それがたぶん、甘えなんだ。


他の人がどういう感想を抱くかはわからないけど、読後感はけっこう良かったです。あの種類の苛立ちは、私もたまに抱いてしまうから。


・・・


殺人鬼の零崎人識に関しては、もうすこし掘り下げて欲しかったかな。


この巻のいいところは、みんな、巫女子が持っていった気がします。一生懸命なところがかわいい。一途なキャラというのは、魅力があるもんだ。巫女子も、いーちゃんなんかを好きにならなければ、もう少し幸せになれたんじゃないかな。


この本で、一番おもしろいところは、やっぱり「戯言遣い」がその本領を発揮するところですね。巫女子との最後の会話のところ。こう、退路を絶って、ネチネチネチネチと詰めて行くところがなんとも言えない。読了後、イントロとその会話部分はどうしても読み返したくなって読み返しました。