『Fate/Zero』の感想2

http://d.hatena.ne.jp/fujisawamasashi/20160808#p1
の続き。

夏休み(?)を使って全部見た。

  • Fate/stay night』『Fate/stay night UBW』に比べると、こっちの方が断然面白い。
  • Zeroの方が、それぞれのキャラが魅力的に描かれている。会話のテンポも中身も良い。戦闘も面白い。世界設定も存分に活かされていると思う。
  • 悲劇要素が強く、絶望と挫折、不幸や悪に関しての描写が多い。そして僅かな希望が描かれる。

以下、ネタバレを思いっきり含む感想なので、折りたたんでおきます。

  • 切嗣
    • 良いキャラでした。体内時間操作というちょっと地味な魔法で大活躍です。時間操作という事で、『魔法少女まどか☆マギカ』のほむらを思い出しました。二人とも時間操作魔法+銃の組み合わせ。
    • 特にケイネス戦、言峰綺礼戦は良かったですね。
    • キャスター戦では、裏方っぽい感じでしたが、彼のおかげでセイバーは枷を外せたし、キャスターを倒すこともできたわけです。人の心理を読むことも、戦術面を考えることもできる。
    • 凄い臆病になったりする描写(アイリスフィールや舞弥に対して)は、彼女らを利用するための演技かな?とも思いましたが、本当に怖がっていると解釈する方が妥当な気がしました。セイバーをなだめすかしてでも利用する方が絶対戦いが有利になるのに、突き放しているし。セイバーと離れているから、鞘の力を十分に発揮できないし。離れていた方が良いこともあったとは思いますが、共同で戦うべき時もあったのではないかな〜と。
    • 切嗣の過去の話に関しては、本人の性格を形成する良いエピソードだと思いましたが、もう一歩何か欲しい気もしました。
    • 聖杯の秘密が明らかになるシーンは、たいへん良くできていると思いました。切嗣を通して叶えられる願い事の限界みたいなのが語られています。切嗣が聖杯を破壊する理由がZeroでは語られる必要があったと思いますが、うまく語られていたのではないかと思います。好きな人を殺す選択をせざる得ない性格で、最後に僅かな救いはあるものの、彼の悲劇がZeroの大きな部分を占めるでしょう。
    • 切嗣が関わる多くのエピソードが、聖杯で切嗣が叶えられる願いの限界と関わっていて、ここらへんは見事だと思いました。
  • 舞弥
    • 切嗣のサポート役として頑張ってくれました。後半、アイリスフィールとの会話がなかなか良かったです。
  • アイリスフィール
    • 切嗣のおかげで、ただの人形ではなく、人としての生を一時的に得た。ハッピーエンドとは言えないかもしれないけど、精一杯生きたと言えるのではないかな。この人のおかげでセイバーは切嗣のためにけっこう働けたと思う。
  • セイバー
    • ランサーを甘く見るから、怪我を負うんだよ…。手の内を知らない同士なんだから、油断しては駄目というか。
    • セイバーはできるかできないか分からないことを、できる、みたいに言うことが多くて、ある意味士郎と似ているのかもしれない。
    • たくさん見せ場があって、キャスターを倒すところは騎士王ならではの活躍かな。
    • 騎士としてのアイデンティティが、目標達成を阻害しているよな〜。でもこれは仕方がない気もする。騎士であり王であるというのは無理な事なんだろう。王は清廉潔白とか忠義とかだけでは居続けることができるものではないと思うし。対バーサーカー戦及び、聖杯破壊でセイバーは絶望に落とされる。
    • バイクに乗っている所は良かったです。
    • エクスカリバーが強力すぎるので、stay nightの方ではマスターの魔力が少ないから使えない、Zeroの方では呪われた怪我で使えない、などの設定が必要だったと思われる。
  • ウェイバー
    • このキャラは最後まで生き残るかな〜と思ったら最後まで生き残れました。生き残るのが切嗣・綺礼・アーチャー・セイバーだけではちょっと絶望的過ぎますからね。ライダーを通して、成長していく描写は良かったです。
  • ライダー
    • アレキサンダー大王がモデル。見せ場はいろいろあって、バーサーカーひいたり、アーチャーとセイバーとの語り合いとか、アサシンを一気に倒したり、キャスター戦での時間稼ぎしたり、最後のアーチャー戦とか。豪快で大雑把そうに見えて、けっこういろいろ配慮するキャラだったようにも思います。
    • セイバーに対する助言みたいなのは良かったです。セイバーの願いってちょっと無茶なんですよね。まあ、切嗣の願いもちょっとどうかな〜って思うんですけど。セイバーに対して、無茶言うな、って感じの事は誰かがこのZero中でも言って欲しかったし、そういう面でも良かったです。
  • キャスター&龍之介
    • キャスターは狂っているけど、なんだかんだ言って凶悪。なんだか二人で意気投合して良いコンビだったと思います。残虐過ぎて、気持ち悪いという側面も強いのではありますが。この二人は社会から見れば悪だけど、人生を堪能した感じの描写がなかなか興味深かったです。物語上にこの種の悪役がいても良いかと。
    • この二人に限らず、それぞれのキャラが、哲学というか生き方を追求している感じが良いと思いました。キャスターは作中最強の武器の一つとされるエクスカリバーで倒されたわけで、やられ方も目立てました。
  • アサシン
    • なんかこの設定は反則じゃないですか? 個々はそんなに強くないからありなのかもしれないけど。アサシンが聖杯に対して願いがあったのかは不明。
  • ケイネス
    • 高慢で嫌味っぽい感じのキャラ造形がある意味分かり易くて良かったです。ランサーを言葉でいじめるところが、本領発揮している感じでした。水銀の魔術はなかなかかっこよくて、対切嗣戦は前半の見せ場の一つですね。ウェイバーとケイネスはもう少し絡むと思いましたが、そうでもなかったですね。ウェイバーが生き残ったことが一つの答えなのかもしれません。
    • Zeroは、それぞれの戦いがとても面白くて楽しめました。stay nightの方は、戦闘がなんだか物足りないんですよね。
  • ランサー
    • セイバーの好敵手という位置づけ。騎士道を体現するキャラ。彼の絶望は物語上必要だったとはいえ、痛ましいですね。ケイネス及びランサーを倒すときの切嗣はセイバーから外道と言われていますが、確かに外道です。目的のために手段を選ばない感じが。セイバーやランサーは騎士道みたいなのを重視し、卑怯な真似を嫌います。しかし、共通するバックグラウンドや共通する守るべき規則を持たない同士で戦う場合、騎士道みたいなのを守るのは大変ですよね。大きな枷になる。人質取られたりするだけで、大変になる。圧倒的に強いのなら、騎士道精神を遵守しつつ卑怯な相手とも戦えると思いますが。相手に「卑怯者!」とか「外道!」とか言って何になるのか。
    • ランサーを倒したあと、切嗣とセイバーとの会話(?)があって、それも印象深い物でした。切嗣には思っていても言うなよ、とは思いましたが。適当に誤魔化す理由を言って、セイバーをうまく使うべきだろうというか。
  • 雁夜
    • なんだろう。この、最初から不幸になるとしか思えないキャラと状況。結果としてどん底に落ちていったのでした。不幸の固まりみたいな人です。一番の見せ場は、遠坂時臣との対話かな。価値観が違いすぎてかみ合っていないところが面白かったです。彼も悲劇担当でした。基本、苦しむキャラが多いので、ウェイバーが健全に生き残って本当に良かったですね。作中ではあのような最後でしたが、凛を助けたという事実は彼にとって一つの救いにはなるかもしれません。死んだときの桜からのコメントが不幸感をさらに際立てます。このキャラは悲恋担当です。
  • バーサーカー
    • 相手の武器を奪い、爆発的な攻撃力を秘めたキャラで思っていたより活躍しました。戦いの状況を混乱させるために出てくることが多かったかな。
    • 飛行機を操ったり、化けてみたり、バーサーカーというには、いろいろでき過ぎる気がします。正体はセイバーとゆかりの人物ということで、セイバーに精神的に揺さぶりをかける機能も果たしました。この人の望みも一応ありますが、なんと言っていいのか…。
    • ランサーとバーサーカーはセイバーと剣劇をするために活躍しましたね。バーサーカーはアーチャー戦でも活躍しました。まさか空中戦が催されるとはねぇ。
  • 遠坂時臣
    • 紳士というか貴族っぽいキャラ。
    • 魔術を希求する心みたいななのは、間桐のじいさんや時臣や切嗣の父親などに共通してあるもの。雁夜との対話でこういう性質がより明らかになりましたね。凛にも魔術師としての生き方が引き継がれていますが、娘の方が緩和されているようです。凛はどういうふうに育てられて、あのように成長したのかを考えながら見ました。
    • 最初から準備していて、戦いを有利に進められそうだったのに、実際はイレギュラーな事が起こりすぎて、思った通りに戦いを進められなかった感じ。
    • 正義感、友達想い、魔術をつぐものとしての誇りや義務感みたいなのを感じました。しかし、自分の能力以上の事に首を突っ込みすぎで、一つ間違えば死んでたし、運がよかったのかも。
  • アーチャー
    • このキャラが綺礼をそそのかしたのか。どういう風にそそのかしていくのかがゆっくり描かれていて良かった。特に綺礼といっしょに酒を飲むシーンは良いと思う。
    • 戦っている時や武装している時は馬鹿っぽくて、仲間と話しているときは賢い感じが、『ジョジョの奇妙な冒険』のDioっぽい。金髪なのも一緒だ。
    • エアとか武器をたくさん出すとか、最強レベルなのだと思うけど、わがまますぎて、サーバントとして使うには難易度が高く、時臣も御しきれていない感じだったなぁ。強ければ良いという分けではないんだな。
  • 言峰綺礼
    • この物語は群像劇だけど、切嗣・セイバー・綺礼がメインだろう。
    • 綺礼の心の変化を描くのがZeroが果たさなければいけない宿題の一つだったと思うし、それは果たされたと思う。
    • 馬鹿みたいに強い。対アイリスフィール&舞弥戦でも圧倒的だったし。サーバントとも互角に戦えそうだ。切嗣が勝てたのは鞘のおかげだろう。まあ、令呪を変換して戦うみたいな技が無かったら、切嗣ももう少し戦えたのかもしれないが。
    • 切嗣と綺礼は最後の方まで対面しない。その間に綺礼はアーチャーに強い影響を受けていく。でも、切嗣と綺礼が腹を割って話し合う機会みたいなのがあったら、どうなっていたのかな?とも思う。双方にどういう影響があっただろうか。
    • 綺礼は目的達成のためにかなり的確な手をうってくるし、切嗣が恐れるのもよくわかる。対人だと無敵の強さっぽいし、セイバーに命令して倒させるべきだったのではないかな。そういうタイミングは無かったかもしれないが。
    • Zeroの物語を通して、悪役としての厚みもできたし、アーチャーとの奇妙な友情みたいなのも描かれたし良かったと思う。
    • 凛に剣を渡すときに、こいつの歪み具合みたいなのが垣間見えて、うまい演出だなぁって思った。この剣が何に使われたかを分かっているとなおさら。そして、stay nightの方を見ている人は、この剣が何に使われるかを知っている事になるんだな。
    • しかし、この綺礼の馬鹿みたいな強さ・行動力・思考力とかを見ると、士郎なんかに負けたのは相当運が悪かったり油断していたとしか思えないなぁ。