模型遊び

最初に書いておくけどオチはありません。

単純なモデルを考えてみましょう。

例えば現時点の自分の知識をA1として、理解したい目標A9があるとしよう。モデルが閃きます。例えば

A1○A2○A3○A4○A5○A6○A7○A8○A9

○があれば理解できたってこと。または隣あうもの同士の関係を掴めたってことにしましょう。A1からA9までの全部の段階を踏めば理解できたと思って良いとしよう。細かいこと言う人は「A1.5は?」とか言い出すかもしれないけどね。それは連続と離散に関する難しい問題が・・・というと馬鹿っぽいのでやめておきましょう。自分が詳しくない知識について触れるのは大変危険ですので止めましょうね。


さて、理解できていない(または相互の関係性をつかめていない)のを×としましょうか。最初の時点では

A1×A2×A3×A4×A5×A6×A7×A8×A9

だとしましょう。

理解するというのは普通は、次のような過程を進んでいるように考えるかもしれません。
A1×A2×A3×A4×A5×A6×A7×A8×A9 (最初)

A1○A2×A3×A4×A5×A6×A7×A8×A9

A1○A2○A3×A4×A5×A6×A7×A8×A9

A1○A2○A3○A4×A5×A6×A7×A8×A9

A1○A2○A3○A4○A5×A6×A7×A8×A9

A1○A2○A3○A4○A5○A6×A7×A8×A9

A1○A2○A3○A4○A5○A6○A7×A8×A9

A1○A2○A3○A4○A5○A6○A7○A8×A9

A1○A2○A3○A4○A5○A6○A7○A8○A9 (最後)

でも、実際はどうでしょうか?

A1×A2×A3×A4×A5×A6×A7×A8×A9 (最初)

A1×A2○A3×A4×A5×A6×A7×A8×A9

A1×A2○A3×A4×A5×A6×A7○A8×A9

A1×A2○A3○A4×A5×A6×A7○A8×A9

A1○A2○A3○A4×A5×A6×A7○A8×A9

A1○A2○A3○A4×A5×A6×A7○A8○A9

A1○A2○A3○A4×A5×A6○A7○A8○A9

A1○A2○A3○A4○A5×A6○A7○A8○A9

A1○A2○A3○A4○A5○A6○A7○A8○A9 (最後)

という感じかもしれませんね。

次は2次元で考えて見ましょう。最初の知識がA11で最後の目的がA99だとします。とりあえずの理解としてはA11からA99までの経路ができれば理解したとしましょう。初期状態が下記で、

A11×A12×A13×A14×A15×A16×A17×A18×A19
 ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×
A21×A22×A23×A24×A25×A26×A27×A28×A29
 ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×
A31×A32×A33×A34×A35×A36×A37×A38×A39
 ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×
A41×A42×A43×A44×A45×A46×A47×A48×A49
 ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×
A51×A52×A53×A54×A55×A56×A57×A58×A59
 ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×
A61×A62×A63×A64×A65×A66×A67×A68×A69
 ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×
A71×A72×A73×A74×A75×A76×A77×A78×A79
 ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×
A81×A82×A83×A84×A85×A86×A87×A88×A89
 ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×  ×
A91×A92×A93×A94×A95×A96×A97×A98×A99

勉強したことによって次のような状態になる。

A11○A12○A13×A14○A15○A16○A17×A18○A19
 ×  ○  ×  ○  ×  ○  ×  ×  ×
A21×A22×A23×A24×A25×A26×A27×A28×A29
 ×  ○  ×  ○  ×  ○  ×  ×  ×
A31×A32○A33○A34○A35×A36×A37×A38×A39
 ×  ×  ×  ×  ×  ○  ×  ×  ×
A41×A42×A43×A44○A45○A46×A47×A48×A49
 ×  ×  ×  ×  ○  ×  ×  ×  ×
A51○A52×A53×A54○A55×A56○A57×A58×A59
 ×  ○  ○  ×  ○  ×  ×  ×  ×
A61×A62×A63×A64×A65○A66×A67○A68×A69
 ×  ×  ×  ×  ○  ×  ○  ○  ×
A71○A72×A73×A74×A75×A76×A77×A78×A79
 ×  ○  ×  ×  ○  ×  ○  ○  ○
A81×A82×A83○A84×A85○A86×A87×A88×A89
 ×  ○  ○  ×  ×  ○  ○  ×  ○
A91×A92×A93×A94○A95×A96○A97×A98×A99

えっ、"パーコレーション"について説明しろ?はいはい、元ネタはそれです。でも、勘弁してください。

さて、A11からA99へいけました。さて、このモデルからどんなことが類推できるでしょうか?自分で考えてみましょう。



というのもなんなので少し書くか。これを3次元、4次元、・・・N次元に拡張したりしたい人もいるでしょう。○と×の濃度によって、A11とA99がつながる確率がどうなるか気になる人もいるでしょう。1次元モデルで考えた理解のモデルと質的にどう異なるか、理解とはなんなのかを考える人もいるでしょう。×が全部○になるまで理解したとはいえないのでしょうか?

「いや、理解というものを考えるにはもっと良いモデルがある」って言う人もいるでしょう。私だってこれが一番良いモデルだと考えているわけではないですよ。でもこういう形にするといろいろなことを想起することができるから面白いと思うという程度です。量子力学の発展の歴史とかを見ると「理解するとはどういうことか」を人類に突きつけたなんて言いたくなりますね・・・というわけで、そういうのが好きな人は『部分と全体―私の生涯の偉大な出会いと対話』(W.K. ハイゼンベルク) ISBN:4622049716


私はこういうモデルを考え始めると暴走してしまって危険なので普段はあんまり考えません。とっても楽しいのですけど。仕事や学ぶ対象が、そういう思考を暴走させるような対象でないのならば、仕事とか学ぶ対象はその人に適したものではない・・・のかもしれませんね。工学系科学者と理学系科学者の違いはあるかもしれませんが、どれだけそれに囚われるか?どっぷり浸かれるか?そこで遊ぶことができるかがとても重要なのではないかな、って思うときがあります。たいていの物理屋さんというのはモデルをつくるのが大好きなのですね(嘘かも・・・)。私は物質にたいする不純物効果(イオン置換効果)とかも研究していますけど、そういうのとも少し関係があります。

物理(に限らず自然科学一般)の面白さの1つに、単純な原理で多くのことが説明できることが上げられるでしょう。全然関係と思われたことに思わぬ共通点があったりすると、とってもわくわくしますね(←擬似的な相関には十分気をつけましょう)。

いわゆる「トリビアの泉」で扱われるような雑学知識は嫌いじゃないんですけど、体系的な知識というものの方が私は好きです。個々の事実間の関係性が大事だと思うのです。


科学で扱われるモデルというのは案外シンプルなものが多いと思います。シンプルであっても、そこに含まれる性質はとても深いのでそれを"理解する"ことが簡単であるわけではないですけど。

「科学って何だろう?」または「科学とはどういう性質を持つんだろう?」ってたまに考えます。たまにしか考えません。「科学は美しくなければならない」とか言う人もいますが、「美しいとはどういうこと?」という話にもなって、やっぱり難しいですね。科学の美しさを知ることと、ダイヤの美しさを知ることとのどちらかを選ばなければいけないとしたら、私は科学の美しさをしれる人間でありたいと思いますけど、それはもしかしてあんまり違わないことなのかもしれませんね。

と脱線しかけましたが、科学において大事なことは"手続き"です。これは民主主義とか裁判とかにおいても大事なものかもしれません。なんて書きだすと脱線してしまいますねぇ。つーか、私は話を収束させるつもりなんてないですけど。関数f(x)のxを指定したら、fはちゃんと答えをはじき出してくれないと困ります。・・・というようなことを書くとまたクレーム(クレープでもクリームでもクリープでもクラークでもフレームでもない←つまらない)が来そうだな(というかそんな暇人はいないことを願っている)。再現性というのは重要なんですけど、再現性がなくても科学足りえるものもあるだろうしねぇ。生物の進化なんて再現できないし。最節約性が・・・(←よく知らない)。

自然科学においては定性的なだけではなくて、定量的なことを言えるべきだと思います。でも、「定量より定性」とか「定量的にはあっているけど定性的には間違っている」とか言う発言もあったりして楽しいです。

モデルを作るのは誰でもできますが、証明とか検証とかそういう"手続き"というのは訓練しないとなかなか難しいことだと思います。

脱線するなぁ。さて、一番最初のモデル(鎖モデル)にもう一度戻りましょう。端っこ以外のAiは二つものにはさまれていますね。二番目のモデル(正方格子モデル)では辺と角を除けば、Aijは4つに囲まれている。さらに3次元の立方格子モデルではAijkは6つに囲まれます。つまりN次元では2Nのものに囲まれるわけですね。囲まれる数を配位数(coodination number)といいます。世の中にはこのような格子ばかりではなく、いろいろな格子(or鎖)があり、その構造によって配位数も異なります。そういうことが私の研究にも関わってくるのですが、それは今回説明するのはやめておきましょうね。

理解すると言うこととネットワークの形成にはとても重要な関係があると思います。

さて、またちょっと違うことを書いてみましょうか。Aijのうち(1≦i,j≦3)を全てまとめて、B11とします。Aijのうち(1≦i≦3かつ4≦j≦6)をまとめてB12とする。というようにまとめると、

B11○B12○B13
 ○  ○  ○
B21○B22○B23
 ○  ○  ○
B31○B32○B33

といようにできますね。ここでは個々のBijの関係を全て○で表してしまいましたが、元の○×からこちらも再定義することが可能です(省略)。さて、これは何を意味するでしょう?


長い放言(というか戯言)でした。オチを最後に持ってこないのが最近の流行らしいですけど(←本当か?)、どこにもオチがないというのはいいのかなぁ(←あんまりよくないと思うぞ)。