『ダウン・ツ・ヘヴン』(森博嗣)

ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven

ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven

考えたことを幾度か口にしようと思ったけれどそれはやはり無理だった。少なくとも、今この場で、すぐに理解はしてもらえない。言葉をどんなに尽くしても、絶対に本当のところは伝わらないだろう。なにしろ、理解よりもまえに、嫌悪や懐疑、あるいは同情が入り交じる。そういった余計な感情が理解を妨げるのだ。あるところまで話すと、もう言葉の意味を受け入れてもらえなくなる。そうにきまっている。いつもそうなのだ。

関係ないけど、話した後にこの話し方では相手に伝わらないよな、って思ってしまうことがある。"話すこと"が相手を探ることになる、相手を理解することにつながる・・・と自分を慰めておこう。

自分の頭の中では整合性が取れているつもりのことでも話すとなると多大な努力が必要になる。相手が自分の話題に興味を持っていたとしてもやっぱりたいへんである。相手が何を分からないか?相手の重み付けはどうなのか?世界観はどうなのか?などを考えながら話せるときは余裕があるとき。普段は相手をひきつけるトピックと言葉を頭の中に探すことに集中するから。さらにそれよりも、吐き出してしまいたいものを言うのに夢中だから。