『封神演義』(藤崎竜)

封神演義 23 (ジャンプコミックス)

封神演義 23 (ジャンプコミックス)

以下はけっこう以前に書いた感想というかメモ書き。なんか外したことを書いている気がしてならない。




対「歴史の道標」戦の後の太公望とジョカとの対話ですが、おもしろいけどもう少し書き込んで欲しいのですよね。少年誌であることと相容れないかもしれないけどさ。

たとえば、太公望自身も他人を良いように操り支配しているのですよ。もちろん、「支配されたほうが気持ちよい・支配される側の本性にあっている・強制的ではない」のですけど。

なんとなく、気に食わないから、という理由でジョカに戦いを挑んだのかもしれないけど。人とか妖怪とかがジョカの支配をはねつけたいという欲望を持っていて、それにのっかったというか呼応した形で太公望は動いている。つまり支配しているつもりがそもそも支配されていた、と見ることもできるよね。そして太公望が助ける人々はジョカの支配の下で選りすぐられて生存してきた生き物。ジョカを倒すことはある意味ジョカの庇護からの独立でもある。ジョカは自分を倒す人たちを作るために何回も文明を滅ぼしてきたことになる。

ジョカは聞仲と同じ問いを発するべきであったのでは?「お前のやっていることは私と同じことではないか?」。そしたら太公望はこう答えると思う。「お前がこうゆうふうに私を突き動かした」

そもそもそういう「〜に帰着させる」というのは1つの理解のあり方に過ぎないとも言えるけど。その帰着の重み付けをちゃんと考えないといけない。どの原因がどの程度重要であるか?よくわからない無数の相互作用の中でどれが重要であるかを考えるのは大変だけど。1つの原因だけに絞ろうとするのは無理があるのだし。


こんな問いもしている。「我々はなぜ戦わなければいけなかったか?」って感じの。太公望はその答えをはぐらかしている感があるけど、それはたぶん価値観が違ったからだ。太公望にはジョカの価値観に耐えられなかったのだろう。いくつもの価値や可能性が刈り取られていくのをみるのはつらかったのだろう。ジョカが自分たちの未来を見てみたかったように、太公望は失われた未来ではなく、すぐそこの手に入る未来が欲しかったのだろう。別の可能性を信じたかったのだろうと思う。