『VERSION』(坂口尚)

VERSION(上) (講談社漫画文庫)

VERSION(上) (講談社漫画文庫)

VERSION(下) (講談社漫画文庫)

VERSION(下) (講談社漫画文庫)

下記は2003年6月4日頃の感想

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うーん、やっぱいいですね。そこらの薄っぺらなSFと違うのです。命と自我の対立なんて視点はなかなか出せないし、出せても薄っぺらになってしまうよ。いつも書くけど作者の早逝が悔やまれます。絵は少し古いかも知れないけど、カメラワークとか構図とか良いと思うし、やはり漫画の中に詩的な言葉をちりばめる才能がすばらしいと思うし、そしてテーマを書ききることのすごさ。薄っぺらな敵を倒して平和が訪れるようなところがないし。

明示的な敵を倒せばいいと言うのもいいとは思うんですけど、やはり敵は身近な存在で、かつ、つかみ所がない存在であると良い。そして自身の成長により、敵が敵でなくなるというような状況も悪くない。

やっぱり漫画にはテーマがほしいなぁ。そして言葉で酔わしてほしい。

小説とかだと、酒見賢一とか京極夏彦とか酔えますね。ストーリに酔うより、言葉でめっためったにしてほしいのです。アクションシーンもいいけど、それだけじゃねぇ。『エンガツィオ司令塔』も言葉で酔える系ですね。読むと催眠状態になるような書き方ができる作家ってやっぱりすごいと思う。