fiction
たまに、思い出したように・・・ ねっ! うん、そういうこともある。 でも、それは、時間的空間的に平均をとった場合を考えれば支配的ではない。 微分に敏感であることは時には重要であるけれど、 それに囚われすぎては道を失う。 でも、そういうのが、ざり…
彼女は、とても悟を信頼していたのだと思う。 尊敬も混じっていたかもしれない。 愛情も混じっていたかもしれない。 相手が信頼できるかどうかって、どうやって判断する? それは、「約束を守るかどうか」だ。 約束をして、守る。約束をして、守る。 それが…
価値があると思える相手に自分のことを知ってもらえるから嬉しい。 自分の良いところは他人に知って欲しいし、悪いところは知って欲しくないと少しは思う。 でも、良いところだけわかったってその人を知ることにはならない。 私の強さも、弱さも議論を通して…
皮肉として言わないとしても、そういうのは態度で伝わってしまうかもね。 何も言わなくても、むしろ何も言わないから、伝わるものがあるし。 だから、これは、彼女にとっての妥協点。 ・・・ 普通の人は、「真面目」って言葉にこんなにこだわりを持つ? こん…
彼の価値観は私とはもちろん同じではないけど、多くの点で同じだった。 真摯さとか誠実さに対する考え方が似ていた。 「私は真面目だよ」とか安易に言う人を私は疑ってしまう。 真面目とか誠実さとかそういうのは、 ある価値観があってそれにどれだけ追随で…
他者とコミュニケーションをする機会が少ない分、コミュニケーションに期待してしまう。 密度を求めてしまう。 他者に、自分のことを認めてほしいって思うから、たくさん学ばなければいけない。 その分、誰かと会話する時間は減る。 でも、相手にわかって欲…
私は話すのが下手だ。 周りの人が持っているモデルをちゃんと把握していないことによるものだと思う。 他者の価値観を理解しようとせずに 自分の意見だけを押し付けようなんて思っても駄目なんだ。
彼女が感じていた、漠然とした不安。 それはおそらく、「拠所がない」という不安。 今まで、誰も彼女のことをわかってくれる人はいなかった。 いつも異端であると感じていた。 異端であり続けることは、負担なのだと思う。 自らの規範や、拠所を、彼女は身近…
たぶん議論を通して得た一番のものは、彼の価値感を私が知ることができて、 私の価値観を彼が多く受け入れてくれたことだろう。 自分の価値観を受け入れてもらえなくても知ってもらえるだけで、 人は、というより私はとても安心できたのだ。
議論に負けることを嬉しそうに回想する彼女。 充実があったのだと思う。 人に駆動される人。 物に駆動される人。 さまざまだけど。 「私」は、長い間、生身の人間ではなくて、物に駆動されていたように思う。 人に駆動されるってことを、知識としては知って…
いつも議論してはコテンパンにやられていた。 議論というものに勝ち負けがあるか、勝ち負けをどう判断するかは難しいところだけど 私の勝率は一割くらいだったと思う。彼にとっても、私と議論することは 彼の考えの筋道を強化するくらいの価値はあるとも自負…
「楽しかった」って言葉は、どんな人が言ったかによって全然意味が違って聞こえる。 言葉の重みは、その人の人生経験によるもの。 他者の「楽しかった」という言葉を表層だけしか感じ取れないのだとしたら、 それは経験が少ないという理由からかもしれない。…
自分の未熟さが友人になれる可能性がある人たちを 嫌いになってしまった原因でもあると気が付いたのは、 彼と議論をするようになってからだと思う。
彼女はそれまでに似たような価値観を持つ人との出会いはなかったのだろう。 表面的な付き合いで終わってしまったり。 誰かにわかって欲しいことがあっても、それを誰も興味を持ってくれない。 「もどかしい」って想い。 そして、他人が興味を持っていること…
私は、もっとこの人に早く会いたかったな。 そうすれば、私はもっと自分を鍛えることができたのに。 そうではないかな。 私が少し成長したから、彼のことが少しだけ理解できるようになったのかもしれない。
彼女は自分自身のことを頭が悪いと思っていない。 特別に優れているとも思ってはいないが。 考えがどれだけ練られているかはともかく、 「どういうことに興味を持つか?」とかが似ているのかな? リソースの配分の仕方・割り振り方が似ているのだと思う。 そ…
学部3年くらいになって悟にあった。 最初は人を寄せ付けないような無愛想なやつだと思った。 話してみるととても不思議に感じた。 短く言うと、頭が悪くないけど何か世間とはずれている。 短い会話の中で私は彼と彼との類似性・相似性を見出したのだと思う。…
彼女は議論をすることが楽しかったのかな? 作り変えられるって言うのは、快ばかりではないだろう。 不快な思いもたくさんしたはず。 でも、自身と他者とを変質させるというのがコミュニケーションの目的とも言える。 紆余曲折を経て学んできたもの、学んで…
大学時代はとても楽しかった。議論できる相手ができたから。 新しい思考、新奇な知識、新鮮な体験。 自分というものがどんどん作り変えられていくような感覚。 どこまでが自発的でどこまでが他者からの影響で 再構成・再組織化されたのかわからないけど。 毎…
生真面目の定義は? 彼女にとって楽しいってどういうことだろう? すごい辛いことがあったとしても、それが意味があることにつながると 信じることができれば、人はその辛さに耐えることができる。 その辛さが後で得たものに対応すると信じられるのなら、良…
少し後ろ向きではあるが記憶を反芻する、というより過去を回想してみる。 大学に入るまでは、他者から見れば比較的生真面目な人生を送ってきたと思う。 別に悪いとは思わないし、そこそこ楽しかったけど。
彼女は眠りについたようだ。 呼吸音で、そういうのはわかる。 遠くで犬が鳴く声。 彼女の安らかな寝顔。 どんな夢を見るのだろうか。 もし夢を見ているのであれば、 それが、良い夢であれば良いな、って「私」は思う。
私の行動は、「老いていく自分」「弱くなる自分」 「嫌な要素、忌避すべき要素が増えつつある自分」への抵抗だったと思う。 それは逃避と言い換えてもいいものかもしれないけど。 私はやるべきことをやったと思う。今は幽閉の身。 体を動かして何かをする機…
彼女はごろんとベッドに仰向けに寝そべった。 黒い天井をじっと見ている。 そして目を閉じた。 動きは先ほどからゆっくり。 一つ一つの動作がとても丁寧な印象を受ける。 残りの時間が僅かなことを意識しているのかも。 大事に大事に、噛み締めるように。 些…
私の気質は少しずつ摩滅して消えて、 意思は年をとるごとに弱くなる気がした。 加齢によって、思い切った行動をできなくなっていくという焦燥感。 そんな想いが、私の心で少しずつ膨張していった。
彼女は静々と歩いて今度はベッドに腰掛けた。 彼女の重みでシーツにしわが入る。 ベッドの近くのスイッチを押すと照明が落ち、 部屋は暗くなる。
今までの自分がしてきたこと・・・、プロセスを考える。 まぁ楽しい人生だったのではないかな。 充実していたとも言える。 太く短い人生よりも、細く短い人生よりも、 積分したものが一番大きくなるように選ぼうと思った・・・、なんて。 短い人生からの将来…
彼女は扉の近くまで行き、電灯のスイッチを押す。 僅かな光が部屋を照らす。 彼女は黒い天井を見上げた。 手を照明へ翳す(かざす)。 彼女は自分の両方の手を動かしながらいろんな角度で見ている。 指を微妙に動かしたりする。 次に手をぎゅっと握り、緩める…
だから、私はその残りのプロセスを静かに見守ればいい。 自分の生(せい)を静かに見守る余裕が最後にあるとは思わなかった。 神様がくれた最後のご褒美だろうか。神様の存在なんて信じていないけど。
彼女は地面を見ながら深呼吸をした。 警備担当者が犬を連れて歩いている。 大きな犬がゆっくりと、 その周りを小さな二匹の犬がすばやく動き回っている。 彼女は僅かに微笑んだ。 何か、嬉しさを感じたのだろう。 彼女は目を瞑り、・・・今度は悲しそうな顔をし…